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2020.10.03/ 活動報告

大宇根先生と宮城県美術館を歩く会

9月20日(土)に、「大宇根弘司先生(建築家)と宮城県美術館を歩く会」を開催しました。これまでも大宇根先生が来仙される際に、何度か県美を案内してもらう機会はあったのですが、今回は県内の若手設計者や建築を学ぶ学生を中心に約20名の参加があり、名建築の設計思想に触れる贅沢な時間を過ごしました。

名建築の設計思想に触れる贅沢な時間

画面やや左のこちら側を向いているのが建築家 大宇根弘司先生大宇根先生は、前川國男建築設計事務所時代に設計チーフとして宮城県美の建設に携われた後、ご自身の事務所にて佐藤忠良記念館を設計しました。佐藤忠良記念館は、増築により1990年(県美の開館10年後)にオープンしています。この2棟のあまりに自然なつながり方に、どこからどこまでが増築範囲なのか、説明を受けるまで知らなかった参加者もいたと思います。

よく見ると分かる本館と記念館のタイル貼り境界

前川建築を踏襲した打ち込みタイルの外壁、本館とのバランスを熟慮した上で地下を設け、あえて高さを抑えたボリューム、映り込む人々を不思議な世界へ引き込むアリスの庭、などなど。数々の丁寧な創意工夫が盛り込まれた記念館は本館と一体化し、川内の自然環境と見事に呼応しています。

コンクリート打ち込みタイルのユニット

建築を生業としている者にとって、良質な建築を体験することは何にも代えがたい喜びです。百聞は一見に如かず。若いときには興味が湧かなかった建築でも、時が経って再訪すると不思議と心に響くことがあり、これは建築(architecture)が人の心に寄り添う芸術だということを教えてくれます。

日本は簡単につくられて簡単に壊される、そんな建物が多すぎるのではないでしょうか。スクラップ・アンド・ビルドへの疑問はもう20年以上も前から建築業界で声高に叫ばれ、持続可能な社会を目指して「リノベーション(改修)」や「コンバージョン(用途変更)」による、ストックの有効活用が当たり前になりつつあります。

佐藤忠良記念館内での解説風景

手間をかけて作られたものは、長い時間を重ねる程、言いようのないエネルギーを発します。宮城県美術館はまだ39年しか経っていません。これから年月を経て、ますます宮城の芸術・文化に相応しい佇まいになっていくはずです。

名建築の設計思想に触れる贅沢な時間でした

(文 宮城県美ネット 菅原麻衣子)