[ NEWS & REPORT ]

2020.11.16/ お知らせ

ご協力頂いたみなさまへ 移転案撤回の発表を受けて

宮城県美術館の現地存続の方針が示されたことに、一同が安堵いたしました。
現地存続のために、陰に日向に、ともに尽力いただいた全ての皆さまとともに、まずは素直に、この喜びを分かち合いたいと思います。

そもそもの私たちの活動は、11月18日の移転集約方針の報道発表に始まります。
2018年3月に「宮城県美術館リニューアル基本方針」が策定、公示されたばかり。寝耳に水としかいいようのない報道に、私たちの誰もが耳を疑いました。
このことを巡って、市民グループ、関係学会、各種協会らが即座に行動を開始し、要望書や意見書を県知事および県議会に提出いたしました。
これと併行して、あえて中立の立場からのアンケートを実施することで県民の意向を探る動きや、情報共有のための横断的グループをつくる動き、そして本格的な署名活動が始まりました。
小さなカフェを拠点に、たった1ヶ月で17,773筆もの署名が集まったことは、今考えれば、この結果を示唆していたといえるのかもしれません。
一方、宮城仙台で格別の存在感を示した東北大学教授陣の毅然とした行動も、大きな支えになりました。私たち市民県民が勝手なことを言っているのではない、もっと社会的に重要なことが根底にあるであろう、そうした思いを代弁してくださる存在は、「学都」を象徴するものであったと思います。
さらに、いわゆるパブリックコメントは、200を超えて集まりました。その殆どが現地存続を願うものであり、性急な移転論への疑問でした。

こうした多様な連合体が動いたことで、県は2020年3月に「移転する」から「移転する方向で検討を行う」に軟化した態度をみせることとなりました。
年度が明け、世の中は確実に、コロナ禍対応に移行していました。震災の傷も癒えない被災地において、心の拠り所の一つである美術館がどうなるのか、私たちはコロナ禍を理由に手を緩めてはならないと考え、あるときは少人数で、あるときはオンラインで相談を重ねてきました。
2020年7月に「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク」として、上記を統合して活動を開始いたしました。このときは、顧問に名を連ねた有識者をはじめとする県外の方々にも多大なるお力添えを賜りました。一口1000円とした会費も、私たちの想定以上に県内外から多く集まり、会は始動しました。

事務局を置いたのは仙台市内の設計事務所ですが、ここでは仕事に差し支えるほど、毎日の反響が絶えませんでした。事務局メンバーが参集し、申込みと口座を照らし合わせ、資料の送付の有無を確認する。そうしたあいだにも、電話やファックスが鳴り止まないという、嵐のような週末が続きました。
会員の輪を広げたい一心で、毎週土曜日に美術館を散歩する試みも、一度も休まず続けてきました。公園のような美術館として計画された県美の魅力は、確実にリピーターを生んできました。
また、ホームページや共通ロゴを制作、さらにはオリジナルトートバッグや画家によるポストカード販売も交え、手弁当の活動を支えていく一助といたしました。
そして9月には、大きなシンポジウムを開催し、現在の美術館の設計者らを交え、その価値を再確認するとともに、どのように手を携えていくのかを談義しました。

なかでも、ここ3ヶ月に力点を置いたのが、県内各地約20箇所で重ねた「出前講座」です。宮城県美術館とはいったいどういう施設なのか。現地に存続することの意味は何か。確実にいえることは、「仙台市に立地しているけれども、県民に広く愛されている、国民の資産である」ということです。各地でエールを頂き、その声をどのように届けるかに注力してきました。
こうしたなかで、リニューアル基本方針策定検討委員会構成員有志は、移転の優先度を高めるために利用される形となってしまったこの方針を本来目的以外に利用することについての懸念を表明しました。
そして、佐藤忠良氏のご子息の達郎氏、ご息女のオリエ氏、前面の列柱アートを手がけたイスラエルの環境アーティスト・ダニ・カラバン氏、北庭の風力アートを手がけた新宮晋氏から、そろって「現地存続」を求める声を直接いただきました。これは、「移転時には信頼関係や価値を失う」ことを意味するものであり、大変重いメッセージであることから、10月15日に本会として、こうした方々への応答をどのようにするのか、公開質問状を提出いたしました。
さらに、冒頭に挙げた各種団体は、要望書や意見書の提出意向、きちんとした説明がなされていないことに抗議する文書を提出いたしました。

11/21には「崖の上の美術館」というシンポジウムを開催します。崖っぷちの美術館、と卑下しなくて済み、本当に安堵しています。そして、それでもシンポジウムは開催します。私たちは「対話を重視」しているからです。
その観点に立つと、実は県の決定も、満点とはいえません。「対話を重視していない」ことは依然として同じだからです。対話の場は開かれていないままです。「方針を決定してからガス抜きの場をつくる」のでは、古い体質は改善されません。

とはいえ、県職員の方々の疲弊も想像に余りあると思います。ですから、まずはご英断に感謝と尊敬の意を表したいと思います。
何しろ私たちは、この危機をきっかけに大変力強い仲間をもつことができました。このことだけは、心から感謝するものであります。もちろん、仲間というのは、ときに異なる考え方を互いに認めあえるものであり、対話、議論を惜しみません。
私たちは、このプロセスを通して得たネットワークの力を活かしていければと考えています。
このため、早急に今後のあり方について相談を行い、関係各位にお伝えして参りたいと存じます。

この度は、ほんとうにありがとうございました。

2020年11月16日

宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク
共同代表 石川善美 西大立目祥子 野家啓一 早坂貞彦